中村仁一 医師
ここへ来て、初めて「自然死」というのを見させてもらったんですね。
病院にいると何もしないっていうわけにはいきませんので…
今の日本人は自然死を知りませんし
医者のほとんども自然死って見たことが無いんですよ
病院にいたら必ず最期まで何かするわけですね
産まれるのも自然ですし
亡くなるのも自然なんですね
自然っていうのはそんなに過酷じゃないんですね
つまり自然死は非常に穏やかに
安らかに亡くなっていく
ところがそこに医療が濃厚に関与すると
非常に悲惨なものになるんですね
かつて悲惨な最期を迎えた家族の方っていうのがですね
癌そのものだと思ったんですね
あの死に方
苦しみ方
どうも違うんじゃないかと
治療で苦しんだんじゃないかということですね
亡くなる当日まで抗癌剤を打たれて
亡くなる当日まで血を抜かれたって言うんですよ
最期まで色んなことをやっぱりやりますのでね
不自然なことをやりますよね
自然に反することを
自然死とは
本体が飲まず食わずですから
餓死なんですよね
もう死に時が来ていますから欲しくない
お腹が空かない
喉が渇かないから
餓死なんだけど全然本人にとっては普通のことなんですね
自然の流れなんです
しかも飢餓状態っていうのは
頭の中から「エンドルフィン」っていうモルヒネみたいな物質がでるらしいんですよ
気持ちよくなるみたい
まどろみの中でこの世からあの世に移っていくのが実は「死ぬ」ってことなんで