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前橋レポート

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ここでは『前橋レポート』と呼ばれている資料の全文をご覧いただけます。

■ 前橋レポートとは?

1990年前半にインフルエンザの集団予防接種が廃止されるきっかけとなった報告書です。

かつて日本では、小学生などを対象に、世界でも珍しいインフルエンザの集団予防接種が強制的に行われていました。感染拡大の源である学校さえ押さえれば、流行拡大は阻止できるのではないかという「学童防波堤論」を根拠としたものです。しかし、どんなに予防接種を打っても、インフルエンザは毎年決まって大流行しました。

こうしたなか、1979年の初冬、群馬県前橋市医師会が集団予防接種の中止に踏み切りました。直接の引き金は予防接種後に起きた痙攣発作の副作用でしたが、この伏線には、以前から予防接種の効果に強い不信感を抱いていたことがあったのです。そして、ただ中止しただけではありませんでした。予防接種の中止によって、インフルエンザ流行に一体どのような変化が現れるのか、開業医が中心になって詳細な調査を始めました。予防接種中止の決断は正しかったのか、あるいは間違っていたのかを検証するためです。

そして、5年に及んだ調査は、前橋市医師会の判断が正しかったことを裏付ける結果となりました。つまり、ワクチンを接種してもしなくても、インフルエンザの流行状況には何の変化も見られなかったのです。この調査をきっかけに、集団予防接種を中止する動きが全国に広がり、最終的に、インフルエンザ予防接種は1994年に任意接種に切え替わりました。

 


■公開までの経緯

1994年に任意接種に変わったのを境に、インフルエンザの予防接種者は激減しました。しかし、2000年ごろから、再び接種者が急激に増えていきました。インフルエンザの流行状況やワクチンの性能は、20年前から何も変わっていないはずです。また、予防接種者がゼロに近かった1994年から1998年の間も、インフルエンザ流行の様子は、他の年と大きな違いがありませんでした。それなのに、厚生労働省やマスコミは、さかんに「インフルエンザ予防接種は必要」と喧伝しています。

そんな疑問を抱いたとき、私たちは前橋レポートに出会いました。なぜ、前橋市ではインフルエンザ予防接種の再開を見合わせたのか? なぜ、集団接種中止の動きが全国に広がっていったのか? 前橋レポートの調査結果は、厚生労働省のインフルエンザ対策キャンペーンなどに比べて、はるかに納得のできる内容でした。

ただ残念なことに、前橋レポートは、専門誌に投稿されたわけではなく、発行部数も少なかったため、忘れ去られるのを待つばかりの状態になっていました。そこで、前橋レポートをもっと広く知ってもらおうと、カンガエルーネットで全文掲載をすることになったのです。

■ 子育て中の親へ

私たちは、この資料が研究者だけを対象に書かれているとは思っていません。むしろ、医学的には素人の親が、予防接種を考える際に、是非とも読んでもらいたい資料だと考えています。例えば、以下のようなことを考えるうえで、非常に有益な示唆が得られると思います。

予防接種の有効性(効く)と有用性(役に立つ)の違い

自然感染による免疫と予防接種による免疫の違い

予防接種のプライマリー効果とブースター効果

病気(感染症)を他人にうつすことを防ぐのは、どこまで可能か

予防接種行政は本当に子供のことを考えて実施されているのか


厚生労働省やマスコミの情報を鵜呑みにするのではなく、子どもにとって、本当にインフルエンザの予防接種が必要なのかどうか、もう一度しっかり考えてみませんか? その際、前橋レポートは、有益な判断材料の一つとして挙げられるのではないかと思います。予防接種をするかしないかは、決して目先の利益だけで判断すべきではありません。「子どもたちにとって、長期的にみて利益になるかどうか」という問題意識から作成された前橋レポートは、どちらかというと親の視点に近いものだと思います。

前橋レポート作成のリーダーであった由上修三氏が書かれた『予防接種の考え方』(大月書店、ISBN-4272401521)も併せて読んでみれば、より理解が深まると思います。