EZURIKO CHブログ

誕生日をたくさん重ねたからって挑戦をやめることはない!

『食品の裏側』安部司 著をご紹介

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https://a.r10.to/hNKMbS

◆添加物のすごい効き目。

 暗い土気色の原料タラコを添加物の液に一晩漬けただけで、赤ちゃんの肌のようなプリプリのタラコに変貌し、ベージュ色のシワシワ干し大根も一晩添加物に漬けると、きれいな真っ黄色のたくあんに変貌。しかも確実に美味しい味になり、添加物のおかげで従来品より低塩でできる。それなら体にもいいのだーーーーと心から感心されたそうです。

天職にめぐり逢えたと。

もっと勉強して日本一の添加物屋になろうと。

麺の製造工場の社長「うちは品質はいいけど、日持ちがしないんだよ」

安部さん「だったらプロピレングリコールとPH調整剤を入れると日持ちしますよ」

餃子の皮の製造工場「皮を作るときに機械にくっついて困るんだよ」

安部さん「じゃあ乳化剤を入れましょう。あと増粘多糖類を入れるとコシが強い皮になります」

手打ちうどん屋のご主人「自分以外の従業員が打つ麺が美味しくないんだよ」

安部さん「グルテンを入れればコシが出てツルツルした麺が簡単にできますよ。他に乳化剤、リン酸塩を入れればパートのおばちゃんでも簡単にシコシコ麺が作れます」

 朝の3時に起きて海鮮市場で魚を仕入れてすり身にして作っていたかまぼこ屋さん「スーパーが特売で売れるような安いかまぼこを作れって・・・」

安部さん「それならば輸入物の冷凍すり身に化学調味料とタンパク加水分解物と大豆タンパクをバンバン投入すればいいですよ」

 そうやって安部さんはトップセールスマンになり、勤めていた会社の支社を立ち上げるまでに。

 某「だしの素」を作った時は全国展開の大ヒット商品となり、その会社は大躍進。そこの社長が大感激し、安部さんの銅像を建てるとまで言われたそうです。

 いつしか安部さんは「歩く添加物辞典」「食品添加物の神様」「困ったときの安部頼み」などと言われるように。

「食品を長持ちさせる」

「色形を美しく仕上げる」

「品質を向上させる」

「味をよくする」

「コストを下げる」

 当時の安部さんは、添加物の危険性など頭になく、「魔法の粉」だと思っていたそうです。

 1500種類以上の添加物が頭に入っていて、その危険性も使用基準も詳細に把握していたけど、あくまでも「机上の理論」に過ぎず現実問題として考えたことがなかったと。

そんなときーーー

🎂娘さんの3歳の誕生日。

 食卓には奥さまが用意されたご馳走が並び、その中にミートボールのお皿がありました。

 安部さんは何気なくミートボールを口に放り込んだ瞬間、、、凍りついたそうです。

 それは他ならぬ、安部さんが開発したミートボール。

 自分が投入した化学調味料・結着剤・乳化剤が山ほど入っていました。

安部さん「それはどうした?買ったのか?〇〇のものか?袋見せて」

奥さま「ええ、そうよ。〇〇食品のものよ。このミートボール、安いし、子どもたちが好きだからよく買うのよ。これを出すと子どもたち取り合いになるのよ」

 見れば、娘さんも息子さんも実に美味しそうにそのミートボールを頬ばっていました。

安部さん「ちょ、ちょ、ちょっと、待て待て!」

慌ててミートボールのお皿を両手でおおったそうです。

父親の慌てぶりにご家族はキョトンとされていたとか。

「パパ、なんでそのミートボール、食べちゃいけないの?」

「これは食べちゃダメ、食べたらいかん!」

お皿を取り上げながら、胸が潰れる思いだったそうです。

ドロドロのクズ肉に添加物をじゃぶじゃぶ投入して作ったミートボールを、わが子が大喜びで食べていたという現実。

「ポリリン酸ナトリウム」「グリセリン脂肪エステル」「リン酸カルシウム」「赤色3号」「赤色102号」「ソルビン酸」「カラメル色素」・・・・・

このミートボールは安部さんにとって誇りだったそうです。

本来ならば使い道がなく廃棄されるようなものが食品として生きるのですから環境にも優しいし、お財布にも優しいし、国が許可している添加物ばかりを使っているのだから食品産業の発展にも役立っているという自負もあったそうです。

しかしいま、はっきりわかったのは

「このミートボールは自分の子どもたちには食べて欲しくないものだった」ということ。

ーーーーそうだ、自分も、自分の家族も消費者だったんだ。

今まで作る側・売る側の認識しかなかったけど、自分は買う側の人間でもあるんだ。今さらながらそう気づき、その夜は一睡もできなかったそうです。

それまで聞き流していた様々な人の言葉が脳裏に浮かび・・・

漬物工場やハム工場の社長「うちの商品は買うなよ」

レンコン会社の社長「うちのレンコンは自分では食べない」

餃子屋や豆腐屋、アジの干物の工場の従業員「自分のところで作っている食品は気持ち悪くて食べない」

 安部さんが住んでいた都市は他の都市と比べてアトピー性皮膚炎の子どもが多いと知り、その何千分の一かは自分の責任ではないか・・・?!

 しかし、自分は法を犯したわけではなく、国の定める基準に従って添加物を使用してきたし、ラベルにも正当に表示をしてきたーーーーそう考えてもやはり、罪悪感はぬぐえなかったそうです。

 気づくのは遅かったけど、「目覚めて」しまった以上、もう仕事を続けることができなくなり・・・家族の生活を考えると葛藤もありましたが・・・

🔴翌日、安部さんは会社を辞められたそうです。

そのミートボールは、スーパーの特売用として、あるメーカーから依頼されて開発したものでした。

発端はそのメーカーが「端肉」(牛の骨から削り取る肉とも言えない部分。本来ならば産業廃棄物となるべきクズ肉)を安く大量に仕入れてきたこと。

この端肉で何か作れないか安部さんに相談が来たそうです。

元の状態では形はドロドロ、水っぽく、味もなく、とても食べられるシロモノではなかったそうですが、「これを食べられるものにするにはどうすればいいか・・・」

まず安い廃鶏(卵を産まなくなった鶏)のミンチ肉を加え、ソフト感を出すために「組織状大豆タンパク」を加え、ベースを作る。

味付けは「ビーフエキス」「化学調味料」、歯触りを滑らかにするために「ラード」「加工でんぷん」を加える。

さらに工場での作業性を良くするために「結着剤」「乳化剤」を加える。

色を良くするために「着色料」、保存性を良くするために「保存料」「PH調整剤」、色あせを防ぐために「酸化防止剤」を使用。

これでミートボール本体が完成。

次にソース。コストが上がるので市販のものは使わず、氷酢酸を薄めカラメルで黒く着色。それに「化学調味料」を加えて「ソースもどき」を作る。

トマトペーストに「着色料」で色をつけ、「酸味料」を加え、「増粘多糖類」でとろみをつけ、「ケチャップもどき」が完成。

これをミートボールにからめて真空パックに詰めて加熱殺菌をすれば商品のできあがり。

添加物は20〜30種類を使い、添加物のかたまりと言っていいレベルのものだったそうです。

このミートボールは売値が100円弱。原価は20円〜30円。

発売開始からこの商品は大ヒットし、そのメーカーはこの商品だけでビルが建ったと言われたほどだったとか。